旅をする沼

マンガやなんやかやについて、読むのは自己責任で。

ドリフターズ/平野耕太

前回は石黒正数の作品についていろいろ書きなぐったので、掲載雑誌つながりでお次はこちら。平野耕太の「ドリフターズ」。

 

ドリフターズ 1 (ヤングキングコミックス)

ドリフターズ 1 (ヤングキングコミックス)

 

 

ずっと買おう買おうと思っていたんですがようやく買えました〜!!わ〜い!!本屋行くたび全巻平積みで置かれちゃたまらんですな、まだ既刊4巻だし……。

 

はっきりいってここ最近買った漫画の中でぶっちぎりの作品。

ドリフターズ」は簡単に言うと歴史上の人物たちがある異世界にとばされて国奪り合戦をする話。古今東西偉人チャンバラドリームマッチってところですね。

基本ファンタジー戦争物って感じだけど、思ったより殺伐とはしてない!内容重いわりに登場人物のみなさんは軽快な人が多いのでギャグも多め。

世界観の都合上専門用語が多くて、あらすじの説明がとても難しいのだけどwikiを多分に引用して説明すると大体こんな感じ。

 

西暦1600年、関ヶ原の戦いの最中、謎の存在『紫』の手により島津の退き口から、エルフやオークのいる異世界に召喚された島津豊久は、同様に流れ付いた織田信長那須与一と出会う。その地で「漂流者(ドリフターズ)」と呼ばれる豊久らは、人間が支配するオルテ帝国に虐げられるエルフの村を解放、その勢いのまま「国奪り」を開始する。

一方、北方の地では『EASY』の送り込む召喚者達「廃棄物(エンズ)」が黒王を頂点とし、亜人の軍勢をもって人類を絶滅させるべく進軍を開始していた。安倍晴明率いる、魔導結社「十月機関(オクト)」は漂流者を集め黒王軍に対抗すべく、豊久達にも協力を要請するが…。

その他にもオルテの大貴族にして、漂流者であったサンジェルミ伯。グ=ビンネン通商ギルド連合に身を寄せる山口多聞。亜人を率いて帝国方面軍に抵抗する、菅野直とスキピオ。…各地に散る漂流者と、世界の命運は混乱の一途を辿る。

 

この作品の魅力は当然、古今東西の英雄が集まることにあるんだけれどもそれをよく表したのが、「十月機関」から派遣された監視者兼補助役として有能なオルミーヌのこのセリフ。

 

そうか

この人達が私達と決定的に違うのは

知識や技術や文化がどうとかではなく

死生観が違うんだ

 

時代と場所と身分の違いっていうのはそういうこと。もちろん知識や技術の違いも面白さの一つなんだけれども、やはりこの作品の素晴らしいところは一人一人の人間を形作る思想の違いがビシバシ伝わってくるところだと思う。死生観とか倫理観とか信条とか、そういうものを詰め込む器として人間がある感じ。だから「紫」VS「EASY」がそのまま「漂流者」+「十月機関」VS「廃棄物」っていう構図にはならない。それぞれの人物がそれぞれの信条に従って行動を起こしている。だから戦のために生きている豊久が女の首は手柄にならないという理由でジャンヌダルクを仕留め(られ)ないところはサイコーでしたネ。

出てくる人が軍人や武士が多いので、戦術的な部分の駆け引きも面白さの一つ。こういうところにも時代場所の違いが出る。信長なんかは相手を罠にはめたり火責めとかでとってもイキイキしてて…武器に関してもそう。信長は銃(火縄銃的なやつ)使いたくて火薬をつくるんだけど、ワイルドバンチ強盗団に拳銃やガトリング銃見せてもらったときの顔といったら……悪い顔ダネー。「漂流者」と「亜人」(「十月機関」の構成員も「亜人」なのかなあ)それぞれの持っている知識と技術が組み合わさった時に新たな戦術の可能性が広がるのがムネアツです。あと「漂流者」は普通の身体能力を備えた人間だけども「廃棄物」はスタンド能力みたいなのを持っているので、「漂流者」と「廃棄物」では戦闘上のルールが違う感じもわりと好き、理不尽で!

ただしこの漫画を楽しむためにはもちろん読者が歴史的な知識を持っていることが望ましい。登場人物に関する基本的な知識はあった方が読んでて楽しい。「廃棄物」は悲惨な最期を遂げた人物と言われていて、その憎しみが基本的な行動原理になっている。ジャンヌダルクなんかは分かりやすいですね、能力炎だし(火刑で死んだので)。第二次世界大戦でパイロットをしていた菅野がジャンヌの能力によって炎上する城壁を見て空襲を思い出す演出なんかは結構好き。

 

漫画的なことで言えばとくにアクションシーンは見物。私はハガレンなんかはかなり戦闘シーンの描写が優れた作品だと思ってるんだけど、ああいう人の動きがすごくよく分かる、アニメーションを見てるよう、っていうようなのとはかなり違って「ドリフターズ」はどちらかと言えばジョジョタイプ。静止画というか、全部決めゴマみたいな。でもインクを使いすぎているせいかどうか知らんけど、とにかくそこに立ち込める空気とか、血や硝煙の匂いっていうのは画面からめちゃくちゃ伝わってくる。

あとは何と言っても台詞回しですね。ヒラコー節炸裂。まあ確かに厨二くさいところもあるっちゃあるんだけどもそういう部分は振り切れてしまえばあまり気にならない。「HELLSING」のときの少佐の「よろしいならば戦争だ」も相当しびれたけど、演説シーンなんかはやっぱりかなりかっこいい。

 

ちなみに私のオススメは菅野デストロイヤー直。実はこの漫画で初めて存在を知ったんだけど調べてみたらはちゃめちゃに面白い人でした…(史実として)。ちなみに「ドリフターズ」は各話のタイトルがいろんな楽曲名になっているだけど、なにより登場回のタイトルが「私の彼はパイロット」なのがサイコー。今後グ=ビンネン通商ギルド連合とかと絡むときに海賊とか出てきたら面白そうだなあと思う。希望だけど。